自転車を2人乗りする高校生カップル

寺田鳥五郎

2008年07月31日 19:34

取材の帰り、渋滞につかまりノロノロ運転をしていたとき、
自転車を2人乗りする高校生のカップルを見かけました。
二人とも制服姿だったので、クラブ活動の帰りなのかもしれません。

日に焼けたスポーツマン風の男子が自転車をこいで、
今時珍しい黒髪の女子が横向きの姿勢で座席にちょこんと座っていました。

女子が男子のカッターシャツの腰のあたりを軽くつまんで、
どこかよそよそしい。二人はまだ付き合っていないか、
付き合いはじめでしょう。
そんな二人を見て、柄にもなく甘酸っぱい気持ちになりました。

自転車の2人乗りは、ダメなんですよね。
警察官が見たら、間違いなく停められて、降りるように注意されます。
でもね、男女で自転車を2人乗りをするのって、高校生のときぐらいじゃないですか。
大学生や社会人になったら、運転免許をとって、
バイクでタンデムか、クルマでドライブでしょ。
女子を乗せて一所懸命ペダルを踏んだ記憶や
男子に乗せてもらってちょっと恥ずかしかったという思い出は、
結構大事だと思うのです。今日、ボクが甘酸っぱい気持ちになったみたいに。

そんなことを考えていたら、
そのカップルの自転車が、坂道に差しかかった。

ほら、男子、ガンバレ。男らしさをアピールチャンスだ。
「大丈夫、降りようか」という女子のやさしさをエネルギーに
ガッツリいいとこ見せてやれ。
苦しくても降りるんじゃないぞ。
そのがんばりは、何十年か未来の君を
温かい気持ちにさせてくれるから。

と思っていたのだが、
自転車は坂道に入っても、
スイスイと軽快に走っている。

随分と健脚な男子だな。
最近の子どもたちの運動能力が落ちていると聞くが
なかなかやるではないか。
感心、感心……それにしても、まったくペースが落ちんな。
彼は自転車部にでも入っているのか?

あ! そういうこと。
女子のスカートで見えなかった。
君たちが乗っていたのは、電動アシスト自転車なのね。
どうりで楽々と坂道をあがっていくわけだ。

便利なものが、2人の思い出をひとつ奪ってしまった。
と思うのは、ボクだけでしょうか。