知らないおじいさんが訪ねてきた

寺田鳥五郎

2008年12月01日 19:08

一週間ほど前のことです。
夜9時頃、自宅のチャイムが鳴ったので出ると、
そこには新聞を持ったおじいさんが立っていました。
背はそれほど高くなく、細身で上品で、大学教授のような方でした。

「どちらさまでしょう?」
見覚えがないので、そうたずねたのですが、
返ってきた答えを理解することができません。

「おじいさん、家はどこですか?」
と質問すると、インターフォンを指さして、「ここです」と言います。

認知症のようで、まったく会話が成立しません。
このまま放っておくわけにもいきません。
たまたま父がいたので、相談して警察に連絡することにしました。

おじいさんは、ボクに持っていた新聞を渡しました。
見るとそれは、キリスト教関係のものでした。

通報から20分後、パトカーが到着。
警察官が所持品を確認するために
身体検査をされましたが、何も持っていませんでした。

「あんたら、おまわりさんみたいな格好しとるな」
とおじいさんに言われ、警察官は苦笑いし、手がかりがないことに困惑していました。

僕はもらった新聞のことを思い出し、警察官に渡しました。
「良かった。ついさっき、近くの教会から捜索願いの通報が入ったんですよ。
多分、そこの方でしょう」

警察官は安堵の表情を見せると、
パトカーで教会まで送り届けてくださることになりました。

翌日、教会の方が我が家を訪問され、
お礼にとお菓子をおいていかれました。
母が応対したのですが、おじいさんはとても偉い先生で、
勝手に外に出たのは今回が初めてだったとか。
驚いてみんなで必死になって探していたので、
警察に知らせてくれて本当に助かったと、感謝されていたそうです。

大きな事故にならなくて本当に良かった。
何か起きても、地域で助け合うことの大切さを実感しました。